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事業承継の基礎知識

事業承継信託|自社株信託

信託とは

信託とは、財産を特定の者に「信じて託す」制度のことです。

本人が決めた「目的」のために、誰かに本人の財産の名義を移転し、
本人または本人が指定する者のために、その財産の管理・運用・処分をしてもらう制度になります。
「民事信託」や「家族信託」とも言われます。

例えば、父・母・長女の3人家族がいたとします。
この場合に、父が認知症になってしまうと、判断能力がなくなってしまいます。
そうすると、銀行口座が凍結してしまい、家族といえども、口座からおカネを引き出せなくなってしまいます。

その対策として、信託を活用するケースが多いです。

認知症対策として、父の銀行口座のおカネを長女に信じて託し、そのお金を父のために使うと契約をしておきます。
このように信託をすることで、例え父が認知症になったとしても、
長女が代わりに口座からお金を引き出すことが出来て、父の施設の費用等の支払いが出来るようになるのです。

事業承継において信託を活用するメリット

事業承継において、信託を活用するメリットはいくつもあります。

①自社株式を「支配権(議決権)」と「財産権(配当金等)」に分けることができる

自社株式は「支配権(議決権)」と「財産権」と二面から考えることができます。
理想としては、自社株式の「支配権(議決権)」は一人に集約しつつ、「財産権(配当金等)」を他の相続人に分け与えることです。

しかし、通常であれば、自社株の「支配権(議決権)」と「財産権(配当金等)」は分けることは出来ません。
自社株式を渡すときは「支配権(議決権)」と「財産権(配当金等)」をセットでしか渡せないのです。

しかし、信託を活用することで、これらを分けることが出来ます。
それゆえ、「支配権(議決権)」は後継者に集約して渡し、「財産権(配当金等)」を他の家族に分けて渡すことも出来ます。
信託の活用により、例えば相続財産のほとんどが自社株式のような状況でも、相続人間のトラブルに発展することがなく、家族円満の事業承継を実現することができます。

②後継者の成長を見守ることができる

事業承継をしようとしても、後継者にまだ全て任せることができないといったケースもあります。
そのような場合でも、信託を活用することができます。

自社株式を信託する場合には、「指図権」というものを設定することができます。
「指図権」とは、後継者に自社株式を渡してしまっても、その議決権の行使の仕方を現経営者ができるようにしておけるものです。

例えば、株主総会の議案について賛成するように指図することができるのです。
「指図権」を定めておくことで後継者の成長を見守りつつ、後継者が間違った決断をしようとするときには、現経営者がそれを正すことができます。

③後継者を変更したい時に後戻りができる

事業承継として、自社株式を長男に贈与した後に、次男の方が後継者に向いていると思っても、基本的に後戻りはすることができません。
しかし、信託で長男が後継者に適さない時には信託契約を終了する旨など、あらかじめ設定しておくことで後戻りをすることができます。

信託をする上での注意点

信託を活用するためには、財産(自社株式等)を預ける人に意思能力がなければなりません。

つまり、認知症になってしまうと、信託をすることは出来ないのです。

現在、5人に一人が認知症予備軍といわれており、認知症はもはや他人事ではありません。
信託を活用した事業承継を考えるためには、早いうちから事業承継の対策をしていく必要があります。

事業承継における信託の活用例

活用例:まだ経営の全てを任せることができない!

現経営者(65歳)はオーナー経営者です。
家族構成は、現経営者の奥様と長男です。
会社の後継者は長男と考えており、長男も社内で取締役として働いています。

現経営者は、仕事に精を出し、会社の業績も毎年少しずつアップしています。
長男を後継者と考えているものの、まだ経営を全て任せるのは早いと思っています。
また、現経営者の方も生涯現役でいたいと思っています。

しかし、後継者が一人前になってから会社を譲ると、自社株式の評価額が高くなり、税金が高くなってしまいそうです。

つまり、自社株式の評価額からみると今すぐに会社を譲った方がよいものの、
経営の面からみるともう少し後に会社を譲った方が良いということです。

<課題の整理>
1. 現経営者はまだ経営権を渡したくない
2. 後継者に経営の全てを任せるのは早い。
3. 自社株式の評価額は将来高くなりそうなので、税金の面からは今の評価額にて渡したい

そこで、事業承継に信託を活用します。
信託を活用すると、基本切り分けることができない自社株の「支配権(議決権)」と「財産権(配当金等)」を分けることができます。

そして、「支配権(議決権)」を現経営者に残しつつ、「財産権(配当金等)」のみを後継者に渡します。
そうすることで、現経営者が支配権(議決権)を持ちつつ、後継者が育つのを待つことができます。
また、「財産権」を後継者に渡しているため、
税法上は譲り渡した時点での株式の評価額をもとに算出した金額で贈与したものと計算されるため、いずれの全ての課題もを解決することができます。

このように信託は自由度が高いため、事業承継をする際に信託を活用することで柔軟な対応ができます。
ただし、信託は専門性が高いため、信託を活用した事業承継をする場合には、事業承継の専門家に相談するのがよいでしょう。

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